先日、バスクリンで有名なツムラ芳井社長のご講演が社会起業大学で開催された。
瀕死の状況であったツムラ社に、前社長の要請で経営者として入社し、そしてご自身が社長を継いだあとも、素晴らしい分析力、決断力、そして行動力で、見事なV字回復をさせた話を聞けただけでも大満足。
しかし、それだけでなく、もっと貴重で本質的な話も聞くことができ、私にとっても大収穫となった。
芳井社長は、会社を立て直すには、経費の削減ももちろん大事だが、本業を強化するのが最も大事なことと考えていた。
ツムラ社の本業は、漢方薬を販売すること。
私も知らなかったのだが、漢方薬は一千年以上の歴史があり、日本人の体質、風土や採れる薬草に合わせて独自の発展を遂げてきたにもかかわらず、明治24年(1891年)に医師の国家制度がつくられたとき、西洋医学を採用し、漢方を医療から閉め出してしまったため、発展が止まったとのことだ。そして、1976年に、医療用の薬品として医療保険の対象にようやくなったとのこと。
そういった経緯もあり、どの医師も漢方薬を軽視していて、なかなか医師向けに漢方薬が売れなかったとのことだ。
芳井社長は、
”漢方薬を通じて社会を良い方向に変えることがツムラの使命ではないか”
と考え、漢方薬の良さを、日本の医師に理解してもらえるよう工夫を始めた。
医師は科学教育を受け、患者の方を健康にしたいと、誰もが考えいるので、科学的根拠があれば、必ず心を開いてくれる、という信念のもと、まずは漢方に関心を持っている医師に重点的に症例と処方を説明し、実際の処方に使ってもらえるよう営業担当者に指示を出し、漢方の良さを理解し、そこで関心を持った方のために一般講習会、ステップアップセミナーを開き、知識を提供したとのこと。
こうした努力の積み重ねで、少しずつ漢方薬が使われるようになったとのことだ。
更に、芳井社長は、
”日本の医療に必要な会社になろう。医師国家試験に漢方薬の問題が盛り込まれるまで頑張ろう。それができるのはツムラだけだ”
そう考えて、理解のある大学から説得を始め、漢方薬を医療に使う医師が増え、その動きに応じて大学医学部に漢方を教える講座ができた。全国に80ある医科大学と医学部のうち、すでに79校で漢方薬の講座が設けられているとのこと。
漢方の良さに対しての理解が広がれば広がるほど、ツムラ社の事業も拡大する。
まさに、本業を通じて社会貢献を、そのまま実現した芳井社長のビジョンと行動力には心から感銘を受けた。
さらに、ツムラ社は、途上国のラオスや、財政破綻した北海道夕張市に、直営の生薬生産場をつくり地域経済発展に貢献するだけでなく、福祉施設と共同して障害者の働く場づくりにも大きく貢献している。
今後のツムラ社の事業活動が広がれば広がるほど、日本における漢方薬と西欧発祥の医学を融合が進み、人々の健康を支える仕組みが強化されていくと私は思った。
これこそ、本業を通しての社会貢献。
多くの企業が見習うべき、素晴らしい事例だと思った。
今後のツムラ社の動きからも目が離せられない。
芳井社長と一緒に