電通で新卒女性社員が自殺した事件が、世の中をにぎわしていますが、
若手社員の自殺は、随分前から深刻な社会課題でした。
今回は、電通という超一流企業で、かつ東大卒の新卒女性社員であった
ことから、さらに注目を浴びたのでしょう。
広告代理店、ITコンサル、飲食業、など、労働集約型のサービス業態は、
特に過剰労働を生みやすく、問題が多発しているため、
企業側も十分注意をして、過剰労働を生み出さない
仕組みづくりが必要であると思います。
一方で、今回、私が注目したいのは、なかなか言いにくい話でもある、
働く社員側の問題です。
私は、何か問題が起こった時に、どちらかが悪いのではなく、当事者それぞれに
課題があるから問題が起こると思っておりまして、この過剰労働の問題も、
企業側だけに視点をおくのではなく、働く社員側の課題もみておかないと、
本当の解決には至らないと思うからです。
さて、私は、時には人事担当として、また、キャリアコンサルタントとして、
多くの人に接してきました。
その中で、過剰労働に陥って、うつなどの症状に至る方の中に、
とてもまじめで、気立ても良く、頭の回転も速い、
いわゆる優秀な若者がそれなりの数いることに気づきました。
その方々は、頭がよく気がきくので、相手の要望や期待を理解する力が高く、
子供のころから、親を含む大人たちに評価をされてきた経験を積み上げています。
言い換えると、“努力すれば、大人に必ず気にいられる”
という成功体験を積んで来ている形になります。
そして、社会人になると、自分への要望が急に高くなることに
気が付くのですが、それでも、これまでの成功体験を信じて、
何とか上司や周りの期待に応えようと一心不乱に働きます。
しかし、特に厳しい上司に出会うと、いくらやっても認められないことが続き、
どこかのタイミングで、今までの成功体験がもろくも崩れ去り、心が折れてしまうのです。
人は認めてもらいたいという承認欲求が強いのですが、
その承認欲求が満たされ続けた状態から、満たされない状況に変わった瞬間に
心が折れてしまうのです。
では、こういったことを防ぐために何が必要なのか。
それは、働く=傍(はた)を楽(らく)にする、
ということの意味を若いうちから理解していくことだと思います。
仕事は、自分を認めさせるためにするものではなく、自分にかかわる人を
幸せにするためのもの。
よく使う言葉では、自分の意識を自己承認から他者貢献に、如何に変えていくか、そこにかかっていると思います。
他者貢献。
頭ではわかっていても、実践は難しいことであることも事実です。
是非、周りの同僚、上司、部下の方々を見渡してみて、自己承認欲求で
動いているのか、他者貢献欲求で動いているのかを、冷静にみてくださり、
特に自己承認欲求が強い若者がいたら、早いうちに声をかけて、
あまり無理をしないように声をかけつつ、
働くことの意味を少しずつ伝えてみてください。
投稿日時: 2016年11月15日 5:29 PM トラックバックURL